フフフ、僕はついに己の能力の限界に達しましてね……。到達点です。スタンド能力を手に入れました。

思えば、運動、勉強、仕事などなど、そこそこ無難に何でも出来る人生でした。しかし、一方でこれといって何も突出したものが無く、他人に自慢できる要素は何もありませんでした。可もなく不可もない、凡庸な人間だと自分では思っていました。中庸こそが自分にぴったりだと思っていたため、別にそれに不満や問題意識も無く、平和にのほほんと暮らしてきました。

しかし、しかしです、僕にも一つだけ、素晴らしい能力があったのです。これはもう、この世界を司る上位の存在からのギフトであるとしか思えません。人知を越えた能力です。「平凡で良い」という今までの思想を根底からひっくり返すような、とんでもないものです。

僕に与えられたスタンド能力、それは、『猫にスルーされる』ことだッ!

このブログを始め、カメラを持ち、意識的に猫を追いかけるようになり、気づきました。「猫は僕をまるで相手にしていないっ……!」と。近づき、話しかけ、カメラを構え、ポーズを要求し、撮影する。その間、きゃつらは欠伸をするか、ぼーっとしているか、にゃーと鳴くか、ふらふらどこかへ消えるか、なのです。僕という存在が邪魔で逃げるようなことは、ほとんどないのです。つまり、無視されているのです。

これは恐るべきことです。あの敏感で臆病な猫にまで無視されるとは。

この能力が人間世界でも適用されるとなると、僕はもう大変なことになります。プレゼンは記憶に残らず、発言はシカトされ、手柄は自動的に他の誰かのものになる。給料は振り込み忘れられ、年金記録は紛失し、アマゾンで買ったものは届かない。レストランではウェイターが来ず、葬式にも呼ばれず、ハガキに書いたペンネームはスルーされ本名が読み上げられる。僕に関する一切が黙殺され、社会活動を営むことが不可能となり、あとはもうニンジャになるくらいしか道は残されていません。勿論、必死の思いで敵地の情報を調べ上げレポートを提出しても、気づいてもらえません。本部にも忘れられ、やむなく敵地の住人となろうとしますが、敵地の人たちにも気づいてもらえません。将来的には僕のDNAから、石ころ帽子が開発されます。

しかし、猫を探してうろうろする身としては、これほど素晴らしい能力もそうそうありません。恐らく僕は特質系です。

このスタンド能力を僕は『ノー・サプライゼス(永遠の静寂)』と名付けたッ!

この能力と1000万超人強度画素を誇るカメラで、

『「猫を撮る」と心の中で思ったならッ! その時スデに行動は終わっているんだッ!』

の領域へ到達することにします。