ユリリンとエリリンと田中角栄元首相と、念願の猫カフェに行ってきた。

吉祥寺は『きゃりこ(http://cafecalico.com/)』なる、しゃらくさいネーミングの店である。「ふん、かわいい名前で僕をだまそうったってそうはいかん。なにしろ僕は金のためなら赤子でも猫でも無表情で始末する非情の殺し屋だからな。でも赤ん坊と猫は高いわよー、高すぎて誰にも絶対払えないの」とレベルEごっこを一人でしながら吉祥寺に。

途中、遅刻し、なかなか現れない角栄が実はマックでのんびりしていた、という驚くべきハプニングもあったが、我々三人の奪われた時間の対価として、諭吉を奪い取ったので良しとした。

入店してみると、午後三時という半端な時間にも関わらず店内は満員であり、なんと予約が無いと入れない状態だという。想定外の事態に僕は混乱し、窪塚よろしくビルから飛び降りそうになったが、三十分ほど時間を潰せば入れると聞き、ようやく平静を取り戻す。じゃあ、なんつって井の頭公園に行き、入り口の喫茶店でアイスを食す。ここにもにゃんこがおり、グースカ寝てたので頬のゆるみが早くも止まらなくなる。

ほどよい時間になり、猫カフェへ。

店内は極楽浄土であった。

店のシステムを説明する紙のところに巨大な猫が寝ており、肝心の内容がよく見えず、我々は一瞬にして打ちのめされた。「料金がまるで見えないが、たとえ、隠れている部分に”料金はドル換算”と書かれているなどの計算され尽くされたぼったくりだろうが、悔いは無い」は、われわれ一同の総意であった。

あとはもう猫、猫、猫、猫の見渡す限りの猫の一大カーニバルであった。「まあせいぜい8匹もいればいいほうだろう」と思っていた猫たちは、なんと28匹という大軍勢であり、我々は「曹軍100万」と聞いたときの荊州勢のような気分になった。びっくりした。「マジかよー」と絶句した。

小さいのから大きいのからひょろひょろからでぶまで、三毛からアメショーからトラから見たこともないのまで、途方もない数のにゃんこたちで店内は溢れかえっていた。

この世に我一人と傲然と闊歩したり、ソファを我が物顔で占拠し王を宣言したり、玩具の鼠を過剰な加虐心で執拗に攻撃したり、よく分からん隙間に挟まり寝ていたり、謎の猫使いのお姉さんの足下でぼんやりしていたりと、店内は猫に完全に支配されていた。完全に人間に依存しつつ、明らかに人間より上位に立つ存在に、店内は幸せのうちに統治されていた。なぜか、人権は所詮ただの約束事で、全ての権利などは架空に過ぎないのかもしれないな、と、寄生獣を思い出した。

考えることなど馬鹿馬鹿しい、と気づいた僕は、失神しそうになるのを堪え、猫をあらゆる方向から味わい尽くすことに躍起になった。他の三人も、おのおのの精神の要請に従い、活動にいそしんだ。

そして、時間がどれだけ経ったかもう誰にも分からなくなった頃、僕たちはやがて猫に溶けていった。